「竹前くん」


父の百ヶ日以降、4月の終わり頃から、父の散歩道探しをしてみた。
毎朝3時くらいには起きて、4時頃から3時間はお散歩に行っていた父。
いつも河原で手折った野の花が、テーブルにおいてあった。

父宅から駅とは反対に10分ほど行き新国道4号線を越えると、いきなりの田園地帯がひろがる。
田んぼ地帯の中にはところどころ祠があったりお墓があったりする。
そこを歩いたり走ったりしながら、しばらく行くとセスナ機の飛行場があり、雑木林地帯が広がり、その脇に舗装された土手の道が続き、そこをしばらく行くと、鬼怒川の河原に辿りつく。

ああ、私はこんな場所がこんな近くにあるなんて知らなかった!
なんで晩年の父が、毎日そんなにお散歩に行くのか?
その事が歩いてみてようやくわかったよ。

父はよく、夜明けのその河原は「彼岸の風景なんだよ」って言っていた。
夜明けにそこに行けるほどの健康的な体内時計は私には無く、まだ彼岸の風景を見ることは出来てないが、大体9時過ぎから午前中にかけて行ってみている。

さぼったりしながらもこの数ヶ月、父と一緒に世界中を旅した帽子を被って、
父の自転車に乗って、まずは田んぼ地帯の途中の祠に挨拶をし河原まで行ってみた。
その土手のほとんどダレもいない道すがら、ウグイスを相手(師匠)にして唄うようになったり河原では河の流れを眺めながら唄うようになった。

晴れた日には父の大好きだった日光連山が見え、涙がどわーっと出たりするポイントがある。
そんな場所はきっと父が通った道なのだろうと思う。
帰り道は、父が明け方、お経をあげてたと言ってたお寺に参り、お経をあげる習慣ができた。
そこでお経をあげているとある時は背後に気配が、最近はどんどん近づいてきてきて私の中に父の存在を感じるようになったのであった。

4月から5月にかけては、毎日、緑が萌えていく(これぞ萌え〜)様子が変化していってほんとうに気持ち良かった。

ある時、その寺の近くの田んぼ地帯の中に、とっても良い風景の道を発見し「秘密の美しい小川ポイント」と命名し、ひとりそぞろ歩くのが至福の場所になったのであった。




先日、その道を反対側から歩いてくとオトコの子がその「秘密の美しい小川ポイント」で魚とりをしていた。

「こんにちわー」とお互いに挨拶をする。
と、いうか、人がいないとお互いに挨拶をできるようだ。

河原の土手でも、ほとんど人がいないので、すれ違う生き物がいるとお互いに(?)自然に挨拶をするようになった。犬とかトンボとかかたつむりにもしてみる。

「何がとれるの?」という質問から
「タガメ、うんたらゲンゴロウ、にじます、うんたらかんたら。江戸仏どじょう(?)」

それからおそらく30分ほど、この小川に生息する魚や生き物の話のレクチャーをうけた。
「将来はお魚博士だね!」と、フツーに感心した。
タガメのデザインはすぎょかった。売ったら 4000円くらいするそうだ。
私は「じゃーお小遣い稼ぎできるね!」と、言ったら、
「・・自分で飼うんです」とのこと。
大人な私は卑しい。

そして、この小川ポイントにはすでに6年も通っているそうだ。
・・負けた。 私だけのオエイシスぢゃなかった・・。

彼にとっても貴重な場所で、仲良しの友達3人にしか教えてない場所なんだそうだ。

そのオトコの子は「竹前くん」という中学生であった。

竹前くんは「最近、友達はファミコンとかやって、外で遊ばないけど、外で遊んだらこんなに楽しい事があるのに・・」と、愚痴をこぼしていた。

「そーだよ!あんたいい趣味してるよ!」と、みどりおばちゃんは思わず声を大きくしたのであった。

竹前くんと私は、違った意味で、この小川のポイントを秘密の美しい場所として共有してるのであったが、彼のほうが日数的にも先輩だが、より善い事を知っているような気がした。

おそらく父も、竹前くんと出会っていたかもしれない。




2006.8.9みどり拝











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